rascalのHS学習帳

ラスカルがHSについて学んだことを書くブログです

【翻訳】泥棒ローグの歴史:強盗犯から知能犯になるまで

ウェブサイト「Hearthstone Top Decks」の以下の記事を翻訳してみました。昔のローグが分かる記事になっています。

FROM BURGLARY TO WHITE-COLLAR CRIME: THE HISTORY OF THIEF ROGUE

https://www.hearthstonetopdecks.com/from-burglary-to-white-collar-crime-the-history-of-thief-rogue/

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何年もかかり様々な型を経て、ついに泥棒ローグがネタレベルから環境のトップにまで躍り出た。そこに至るまでにどんなカードが使われてきたのか、過去にどんな失敗があったのか、そしてこのことからハースストーンのカードデザインについて何が分かるのか?金庫室に侵入し、役立つ見識を盗み出してみよう!

《強盗》:残念な始動カード

ローグの「クラシック」カードや最初期の拡張をざっと見ると、今日の泥棒ローグというアーキタイプにマッチしそうなカードは何もないことが分かる。リリース当初のローグのアイデンティティには、単に他のクラスのカードを手札に加えるという行為は存在しなかったのだ。現在のゲームと比べると、リソースを生み出す行為が占める割合がかなり小さかったのもその原因のひとつと言える。それにも関わらず、長年にわたって徐々にTeam 5(ハースストーン開発チーム)がローグのアイデンティティとして、他ならぬこのギミックを導入してきたというのは実に興味深い。

事実として、こういったカードが初めて導入されたのは2015年8月の拡張「グランド・トーナメント」にまでさかのぼり、この《強盗》というカードはフォーラムで長らくこのデッキタイプの顔として知られていた。次第に、多くのプレイヤーからの呼び名は強盗ローグから泥棒ローグへと変わっていった。競技コミュニティの間で、ほとんど議論が飛び交うことがなかったデッキのひとつであるが、その原因は最初のカードが疑いの余地なく相当なオモチャだったことと関係があるかもしれない。

このアーキタイプが最終的にスポットライトを浴びることとなった過程を語る上で、《強盗》がそれほどまでに悪いカードである理由を語ることが素晴らしい出発点となるだろう。基本的には、ランダムなカードがシナジーを生むことはなく、そうしたカードを当てにすることは、カードパワーの高いフォーマット(闘技場と比較した場合。闘技場においては、カード生成は自分のデッキからカードを引くこととほぼ同等か、はるかにいい場合もある)ではかなり悪い戦略と言える。

つまるところ、もっと遅いマッチアップで十分なバリューを得る手段とするには、1枚のカードからランダムなリソースが大量に得られなくてはならない。《カバル教団の魔導書》の場合、それでもこのカードなら、非常に強力なクラスのカードプールから持ってくることが出来るという利点があった。

だが、 《強盗》は基本的にただの貧乏な(かつやり方が汚い)者の《魔力なる知性》と言うほかない。このカードではあまりにも遅すぎる。現在の泥棒ローグでこのカードが採用されることはまずないだろう。そもそも、ローグは長期戦を戦うことが決して得意ではないこととも合わせて考えると、究極のネタデッキと言えるこのアーキタイプが2015年当時に死んでいたのは当然のことだ。

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ローグの窃盗術の進化

スタンダードフォーマット導入後から時間をかけて、少しずつこれをサポートするカードが刷られ始めた。「旧神のささやき」では《アンダーシティの押し売り》が登場し、「ワン・ナイト・イン・カラザン」のクラスカードでは大々的にこのギミックが推進され、《怪盗紳士》《イセリアルの売人》《蒐集家シャク》、続く「仁義なきガジェッツァン」では《幻覚》、「大魔境ウンゴロ」では《黒曜石の破片》、「凍てつく玉座の騎士団」ではリリアン・ヴォス》が登場した。このうち数枚は競技シーンでも見かけ、その中で唯一《怪盗紳士》だけが昨年のコアセットの仲間入りを果たした。

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続いて「妖の森ウィッチウッド」からは《ブリンク・フォックス》(当時はまだこのスタッツでも十分単体で通用した)や《掏り取り》が登場したほか、「博士のメカメカ大作戦」では超ネタカード《学術スパイ》(楽しいが、実戦では到底通用しない)や「天下一ヴドゥ祭」では《盗んだナイフ》が登場した。最近では《失敬》がクラシックセットに追加されたことで、ローグのクラスアイデンティティにハッキリとこのギミックが定着した。

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また、この時点を最後に当初の表現「相手のクラス」からではなく「他のクラス」からリソースを生み出す効果に変更となり、ミラーマッチが退屈にならないよう配慮がなされた。

冗談抜きに、ローグ以外のクラスからカードを追加できなかった場合に、今の泥棒ローグミラーがどうなるか想像してみてほしい。バランスが取れているかは置いといて、見る分には楽しいだろう(他人が苦しむ姿を楽しいと思うのであれば、だが)。

2019年から現在まで:新たなアイデンティティ

泥棒ローグがついに「爆誕!悪党同盟」で素晴らしいカードを手に入れたことで、このアーキタイプ(もしくはシナジーに乏しいネタ寄りのデッキ)が競技レベルになるのに必要な真のリソース、テンポ面にスポットライトが当たるようになった。《最下層の故買屋》《血の復讐》は、当時の攻撃的なローグデッキにおいて 付随的でありながらも重要なカードとなり、《ヘンチ・クランの強盗》も当時のメタ形成に一役買っていた。これと比べてみると、次の拡張セットに登場した関連カード(《巧みな変装》《バザール強盗》)はどんなプレイスタイルでもただ単に非効率的すぎた。

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この年の最後を締めくくったのは、発見カードとして単体で驚くほど強力なカード《ドラゴンの宝の山》だったが、またしても他のクラスからカードを追加する効果を軸にしたデッキが作れるような代物ではなかった。ランダムなリソースを生み出す効果は、ローグがやってきたことの大部分を占めるようになったが、ローグ以外のクラスカードを手札やデッキに追加する要素を活用する方法はなかった。

その後泥棒ローグは、2020年前半にデーモンハンターが引き起こした大虐殺の間も鳴りを潜め、最新拡張セット「烈戦のアルタラック」がリリースされるまで決定的なカードは何も刷られず、端的に言って完全なる冬の時代を過ごしていた。

相当数のナーフが必要と思われるが、カードパワーそして人気の両面において大幅な出世を果たし、記事執筆時点ではラダーを支配しているデッキとなっている。大会主催側が究極のネタカード《十面相のマエストラ》のBANを解除せざるを得なかったのも最高の出来事だった。というのも、このカードが環境トップのこのデッキで重要な役割を果たしているからだ。もう笑うしかない。

 

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では、どうしてそれが実現したのか?マエストラと《ワイルドポーのノール》との特有のシナジーのおかげで得られる空前絶後のテンポのおかげだ。マエストラによって、変装を解かない限り全てのローグのカードが「他のクラスのカード」扱いになるため、安定してコストを軽減できるため、基本的に0~2マナで急襲持ちの《チルウィンドのイェティ》が生み出せる上に、 《二重スパイ》によって3マナ6/6相当のスタッツが得られることが貢献しているのは言うまでもない。また、《紫の煙霧》《偵察》《二重スパイ》《ブリンク・フォックス》を比較することでも見返りが増えたことがよく分かる。基本的に序盤での爆発的なカードパワーに頼らなければならないが、ドルイド《チビクッチャベラー》でも大抵の場合、十分すぎることを見てきたはずだ。それに、レイトゲームでも《デファイアスの親玉エドウィン《ミスター・スマイト》に加えて《影業師スキャブス》があれば足りないこともない。

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他にも多くのローグのアーキタイプがメタに同時発生しているのは不思議ではない。結局のところ、泥棒ローグに採用されたカードの大半が広く有用だからだ。では泥棒ローグ特有の要素は何か?《ワイルドポーのノール》《二重スパイ》のおかげで最序盤に素晴らしいテンポスイング可能となっている点だ。ある意味、これ以外の全ての要素は単なるおまけでしかない。

変わっていたアーキタイプをトップクラスの勝率に押し上げたのに欠かせない要素が、急襲持ち0マナ4/5と3マナ3/3+3/3ミニオンであることは周知の事実となっている。少なくともローグにおいてはこれ以外の方法は考えられない。ローグというクラスは繊細で気難しい性質があり、レイトゲームのリソース量で圧倒したところで競技レベルに及ぶことはないのだ。